太陽ハウジングの家づくりコラム

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2025.06.19
【耐震等級3だけでは不十分!?】本当に安心な地震対策とは?
こんにちは、太陽ハウジングです。
日本は世界有数の地震大国です。過去30年を振り返るだけでも、阪神淡路大震災(1995年)、新潟県中越地震(2004年)、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)など、震度7クラスの大規模地震が繰り返し発生しています。
そして今後も、いつどこで同じような規模の地震が起きてもおかしくありません。
だからこそ、これから住まいを建てる方にとって、「家族を守るための地震対策」は、避けて通れないテーマです。
多くの住宅会社が地震対策として掲げるのが「許容応力度計算による耐震等級3の取得」
たしかに、構造的な強さを証明する大切な指標ではありますが──
それだけで本当に安心と言えるのでしょうか?
実は、「耐震等級3をクリアしている=安心とは限りません」
たとえば、2016年の熊本地震では、現行基準で建てられた住宅のうち7棟が倒壊し、そのうち3棟は施工不良が原因でした。どんなに計算上優れた構造でも、現場でしっかり施工されなければ意味がありません。
また、耐震等級の評価は「新築時の状態」が前提。時間が経てば、基礎や木材の劣化、シロアリ被害、湿気による腐食など、住まいの強さを損なう要因が数多く現れます。つまり、「設計時に耐震等級3を取れば万全」という考え方は、あまりに表面的だと言えます。
実際には、直下率や偏心率、基礎の構造、施工制度、そして土地の性質など耐震性を左右する要素は多岐にわたります。
そこで今回は、「本当に安心できる家づくり」を考える上で、設計・施工・材料・土地選びなど、トータルで見るべき地震対策の基準を、分かりやすく解説していきます。

■データから読み解く「本当に必要な地震対策」
住宅会社の多くは、地震対策として「許容応力度計算で耐震等級3を取得しています」とPRします。確かに耐震等級は建物の強度を数値で示す重要な指標ですが、それだけで安心するのは危険です。
実際の地震被害を見てみると、「耐震等級3だから大丈夫」とは言い切れない現実が浮かび上がってきます。
たとえば、2016年の熊本地震では、現行基準で建てられた住宅7棟が倒壊し、そのうち3棟は「施工不良」が原因でした。つまり、設計通りに家を建てることができていなかったということです。どれだけ優れた構造計算を行っても、現場での施工が甘ければ意味がありません。

※熊本地震における木造の建築時期別の被害状況 出典:国土交通省
また、阪神淡路大震災(1995年)では、シロアリ被害に遭っていた住宅の倒壊率は、そうでない住宅の約2倍という報告もあります。木材が食われて構造の一部が脆くなっていれば、どんな耐震等級を取っていても耐えられないのは当然ですね。
そして最新の2024年・能登半島地震では、1981年以前(旧耐震)の家の倒壊率は約19.4%、1981~2000年の家(新耐震基準)は約5.4%、2000年以降の家はわずか0.7%という調査結果が報告されています。

※能登半島地震における木造の建築時期別の被害状況 出典:国土交通省
このデータは、新しい基準に基づいた住宅の方が地震に強いことを示していますが、それでも倒壊ゼロではない点には注意が必要です。
さらに、2000年以降に建てられた4棟の倒壊住宅のうち、少なくとも2棟は「壁の量」や「配置バランス」が基準を満たしておらず、耐力不足だったことが判明しています。構造計算上問題なく見えても、プランニングの偏りや接合部の不備が致命傷になる可能性があるのです。
■構造の計算方法と耐震等級
「うちは耐震等級をしっかり取っています」と言う住宅会社でも、その計算方法までは説明されないことが多いのが現実です。
しかし、耐震等級の「計算方法」こそが、家の安全性を大きく左右するポイントだということをご存じでしょうか?
ここでは、主に3つの構造計算方法と、それぞれの特徴や注意点を解説します。
① 壁量計算(※おすすめしません)
まず、耐震等級1を取るために使われる最も簡易な方法が「壁量計算」です。
これは建物の形状や間取り、接合部の検討などをほとんど考慮せず、壁の量だけをチェックするというもの。
2025年4月の建築基準法改正により、この壁量計算の基準は一部厳しくなりましたが、それでも根本的な問題は解決されていません。
これまでは「4号特例」という制度により、耐震等級1であれば、建築時に詳細な構造資料を提出しなくても家を建てられるというルールがありました。そして、この壁量計算は、そうした最低限の基準である4号特例の中で広く使われてきた手法です。
2025年4月の建築基準法改正により、「新3号特例」へと制度が見直され、現在では多くの住宅で『構造の安全性を証明する資料』の提出が義務化されました。しかし、延床面積200㎡以下の平屋では、今もなお「壁量計算だけで建てられる」という抜け道が残っており、これを利用して「構造計算なし=コスト削減」とする住宅会社も少なくありません。
実際に、「憧れの平屋がこの価格帯で建てられる」といった、価格の安さばかりをアピールするPRが目立つ住宅会社も存在しています。
構造の安全性にきちんと目を向けないまま家づくりが進められてしまうケースもあるのが現状です。
ところが、この「壁の量だけでOK」という壁量計算には、大きな落とし穴があります。地震のときに本当に重要なのは、「どこに、どんな力がかかり、建物がどう揺れるか」までをシミュレーションすること。単に壁の本数だけを見て「これだけあれば安心」とするような考え方では、家族を守ることはできません。
② 性能表示計算(※条件によってはアリ)
次に「性能表示計算」という方法があります。これは、壁量だけでなく、床倍率(水平構面の強度)や接合部、基礎の鉄筋量、梁や柱の仕様など、チェック項目が格段に多いのが特徴です。また、耐震等級2または3を取得することが前提となるため、第三者機関によるチェックも必ず入ります。
間取りのバランスが良く、構造的に素直なプランであれば、性能表示計算でも十分な強度を確保することが可能です。ただし、複雑な間取りや壁の配置に偏りがあるような場合には不向きなケースもあります。
つまり、性能表示計算が「悪い」のではなく、プランや構造の素直さによって向き不向きがあるという理解が必要です。
③ 許容応力度計算(※最も安心できる方法)
もっとも信頼できる計算方法が「許容応力度計算」です。
これは建物にかかるすべての荷重を一つひとつ数値化し、ねじれの補正や床の剛性(硬さ)なども含めて詳細に検討する方法です。
実際に地震が来たとき、どう揺れて、どこに負担が集中するのかを予測できるため、「間取りに無理があるけど大丈夫?」という不安がある場合には、この方法が必須です。
ただし、許容応力度計算を行うと、間取りの自由度が制限される場合や、積雪地域などでは条件が厳しくなることもあるため、設計力や施工力のある住宅会社でないと対応できないケースもあります。
それでもやはり、「本当に地震に強い家をつくりたい」のであれば、許容応力度計算+耐震等級3の取得がベストな選択です。
地震に強い家の第一歩は「どんな計算で耐震等級を取っているのか?」を知ることです。
住宅会社が「耐震等級を取っています」と言っても、それが壁量計算なのか、性能表示計算なのか、許容応力度計算なのかによって安心度は大きく変わります。
構造の計算方法にこだわってこそ、本当に家族を守る強い家づくりが始まります。

■地震に強い家は「直下率」で決まる?
耐震等級ばかりが注目されがちですが、実は家の強さを左右する重要な要素のひとつが「直下率(ちょっかりつ)」です。ただ、この「直下率」には法的な基準が存在しないため、プランナーの意識次第で大きく差が出てしまうという、ちょっと怖い実態もあります。
・そもそも直下率って何?
直下率とは、2階建て住宅において「2階の柱や壁の下に、1階の柱や壁がどれくらいあるか」を示す指標です。簡単に言えば、上の階の荷重が下の階にしっかり伝わるかどうかをチェックするもの。柱や壁が上下できちんと揃っていれば、地震の際の力がスムーズに伝わり「建物がねじれたり傾いたりしにくくなる=耐震性が高くなる」というわけです。
・直下率が低いとどうなる?
直下率が低い家とは、つまり「2階の荷重を受け止める柱や壁が、1階に存在しない箇所が多い家」のこと。こうした家は、地震時に力の逃げ場がなく、局所的に負荷が集中してしまうため、揺れによって構造が壊れやすくなります。
構造計算の段階で「直下率が低すぎて、補強が必要」と指摘されるケースも少なくありません。そもそもその原因は、最初のプランニング段階で直下率を意識せずにプランを考えていたことが原因かもしれません。
実際に、2016年の熊本地震でも「直下率の低さ」が原因のひとつと考えられる倒壊例がありました。構造計算上はクリアしていたにもかかわらず、上下の壁や柱の位置がズレていたことで、地震の力をうまく逃がせず、損壊に至ったケースです。
直下率は、法的な基準はありませんが、耐震性において極めて重要な要素になります。
・プラン段階から「壁の直下率50%以上」を目安に
柱や壁の位置は、後から簡単に変えられるものではありません。
だからこそ、家づくりの初期段階の「間取りを考えるタイミング」で直下率を意識しておくことが大切。目安としては、壁の直下率50%以上を確保するのが理想です。
構造的に安定した間取りであれば、この数値は十分に目指せるラインです。
ところが、意識の低い設計担当の中には、直下率30%程度でプランを出してくるケースもあります。そのまま進めてしまえば、後からいくら構造補強をしても限界がありますし、プラン変更を余儀なくされたり、施工費も余計にかかることになります。
直下率は、建てた後にはどうにもならない「構造の根っこ」です。プランを設計する担当者に任せにせず、「このプランの壁の直下率は50%以上ありますか?」と確認してみてください。
家族の命を守る家づくりにおいて、施主であるあなたの「ひと言」が、未来の安心につながるかもしれません。
■地震に強い家は「偏心率のバランス」がカギ
地震に強い家づくりを考えるとき、意外と見落とされがちなのが「建物のねじれ」です。
どれだけ耐力壁を入れても、バランスが悪ければ建物は揺れに弱くなり、倒壊のリスクも高まります。この「ねじれやすさ」を数値化したのが偏心率(へんしんりつ)という指標です。直下率と並んで、ぜひ意識しておきたい大切なポイントです。
・偏心率って何?
偏心率とは、家の重心(地震力がかかる中心)と、剛心(家の硬さの中心)がどれだけズレているかを示す数値です。このズレが大きいほど、地震時に建物が「ねじれる=回転する」ような力を受けてしまい、壁、柱や筋交いが破断する原因になります。
たとえ新しい家でも、偏心率が高ければ地震のダメージは避けられません。家を壊すのは揺れではなく、ねじれだとも言われているほどです。
・偏心率の基準は?
現在の建築基準法では、偏心率は0.3以下であれば問題ないとされています。しかし、この数値は最低限クリアすべきラインであり、決して安全の目安ではありません。
実際には、偏心率が0.3に近い家は構造バランスが悪く、地震時にねじれによる倒壊リスクが高まる可能性があります。
おすすめは、偏心率0.2以下。さらに理想を言えば、偏心率0.15以下を目指すことが望ましいとされています。ただし、偏心率を0.15以下にすると間取りの自由度が制限される場合もあるため、安全性とプランのバランスを見ながら、まずは「0.2以下」を目安にすると良いでしょう。
・偏心率は「構造バランスの見える化」
偏心率は、言ってみれば「建物バランスの見える化」です。
どんなに耐震等級が高くても、どんなに立派な構造材を使っていても、バランスが悪ければ倒壊の危険性があります。
だからこそ、偏心率という数値をしっかりと意識することが、家族を守る本当の耐震対策につながります。
・プランニングで偏心率を改善するための3つのポイント
偏心率は、設計後に構造計算で確認される数値ですが、実は「間取りを考える最初の段階=プランニング時」から意識することで、大きく改善できます。
ここでは、ねじれに強い家づくりのために知っておきたい3つのポイントをご紹介します。
① 南北の壁のバランスに注意!
一般的に南側には大きな窓をつけるため、耐力壁が少なくなる傾向があります。一方で北側には窓が少ないため、耐力壁が集中してしまいがちです。この南北の壁量の差が、偏心率を大きくする原因になります。
【ポイント】
・南側にもできるだけ壁を配置してバランスを取る
・大開口にしたい場合は、構造用パネルなどの補強を検討
② 耐力壁をバラバラに配置しない
偏心率を小さくするには、耐力壁を建物の中心からバランスよく配置することが大切です。家の片側だけに偏って壁があると、そこだけが強くなり、アンバランスなねじれを引き起こしやすくなります。
【ポイント】
・耐力壁は家の四隅や中央に対称的に配置
・耐力壁のかたまりを偏らせないように注意
③ 凹凸の少ないシンプルな形にする
間取りが複雑で凸凹が多いと、重心と剛心のズレが起きやすくなります。特にL字型やコの字型の家は、偏心率が大きくなる傾向があります。
【ポイント】
・外観や間取りは、なるべく正方形や長方形などシンプルな形に
・凹凸をつける場合は、構造的なバランスを意識して設計
■家の足元が弱ければ意味がない?「基礎の強度」を見落とさない
耐震等級や構造のバランスがいくら良くても、それを支える土台=基礎が弱ければ、意味がありません。基礎に使われるコンクリートは、時間がたつほど劣化する素材。だからこそ、「どんなコンクリートを使うか」がとても重要です。家の強度を支える足元が弱いと、いくら構造計算をしても意味がありません。
地震に強い家をつくるなら、「基礎の強度」についても、しっかりとチェックしておく必要があります。
・コンクリートにも寿命がある
基礎に使われるコンクリートには、設計基準強度というルールがあります。建築基準法では「18N/㎟以上」と定められていますが、実はこの強度では寿命が約30年程度だとも言われています。
家を長く安心して住み続けるためには、21N/㎟以上を目安にするのが安心です。
とくに耐震等級2〜3を取得する場合は、自然と21N/㎟になるケースが多いため、設計段階で確認しておくと良いでしょう。
・見落とされがちな「呼び強度」とは?
設計基準強度だけではなく、実際に工場で発注される「呼び強度」も重要なポイント。コンクリートの呼び強度とは、コンクリートを発注する際に指定する強度で、設計基準強度に温度補正などを加えて、現場で必要な強度を確保するための数値です。
なぜ呼び強度が大事なのかというと、コンクリートは気温によって固まるスピードが変わるからです。寒いと固まりにくいので、強めのコンクリートを使わないと、しっかり固まらずに弱くなってしまいます。
季節ごとの呼び強度の目安(日本建築学会推奨値)
・冬(気温0~8℃):設計基準強度+6N/㎟
・春・秋(気温8~25℃):設計基準強度+3N/㎟
・夏(気温25℃~):暑中コンクリート+6N/㎟
この呼び強度は、検査されることが少なく住宅会社まかせになりがちなので、「季節に合わせた強度で発注していますか?」と確認するのがおすすめです。
・基礎が割れる原因はコンクリートの劣化
コンクリートは「中性化」と呼ばれる劣化現象があります。年月が経つと空気や水が入りやすくなり、中の鉄筋がサビにより膨張し、その結果、コンクリートが内側から割れてしまう「爆裂(ばくれつ)」という現象が起きます。こうなると基礎の強度が大きく低下してしまいます。
これを防ぐには、基礎の外側に「保護材」を塗ることが大切。中でもおすすめは、弾性タイプと呼ばれる、地震などの揺れにも追従して割れにくいタイプです。
見た目がきれいに見える「モルタル刷毛引き仕上げ」は、経年とともに起こるひび割れが起きやすく、ひび割れが発生するとそこに雨水や空気が侵入し、やがて鉄筋を腐食させコンクリートの欠損へとつながります。また、そこからシロアリが侵入する可能性もあるので注意が必要です。

■シロアリ対策は薬剤だけで良い?
家づくりを考えるとき、「地震に強い」「断熱が高い」などの性能に目が行きがちですが、忘れてはいけないのがシロアリ対策です。
シロアリは木材を食べてしまい、構造材の強度を著しく低下させてしまいます。つまり、どんなに強い構造で建てても、シロアリ被害を受ければその強さも台無しに…。
・シロアリはどの地域にもいます
「うちは寒い地域だから大丈夫」
「まわりは新築ばかりだからシロアリなんて…」というわけではありません。
シロアリは日本全国に生息しています。
特に日本で多いのは「ヤマトシロアリ」と「イエシロアリ」
これらは地面の中に巣をつくり、土の中から建物に侵入してくるのが特徴です。
だからこそ、シロアリが家に入ってこないようにすることが最も重要な対策になります。
・おすすめの対策は?
おすすめなのが、新築時に基礎の下に敷く「防蟻防湿シート」です。
基礎と地面の間にしっかりブロックをつくることで、シロアリが上がってくるのを物理的にシャットアウトできます。
(※このシートは新築の時しか施工できません!あとから設置することはできないので、最初が肝心です。)
・ヒノキや薬剤だけでは不十分?
「うちはヒノキを使ってるから安心」「薬剤を撒くから大丈夫」──
こんな話を耳にすることもありますが、実はそれだけではシロアリ対策として不十分です。
たしかに、ヒノキの心材には高い耐蟻性があり、シロアリ被害を受けにくい特性があります。しかし、実際の住宅では辺材と呼ばれる部分も使用されており、これはシロアリに食べられる可能性があります。
また、薬剤の散布は一般的な対策のひとつですが、効果はおよそ5年程度。その都度、再施工が必要になり、コストもかかります。
さらに注意したいのが「基礎断熱工法」を採用している場合です。基礎断熱は、基礎の内側や外側に断熱材を施工する工法で、床下全体を室内と同じように暖かく保つための手法です。
ただし、この工法では断熱材と基礎のすき間をシロアリが通って、建物内部に侵入するリスクがあります。そのため、床下への薬剤散布だけでは、シロアリ対策として不十分な場合があるのです。
加えて、薬剤の成分が床下の空気とともに室内にまわる可能性もゼロではありません。
こうした理由からも、薬剤だけに頼るのではなく、物理的にシロアリを寄せつけない工夫が重要になります。
■見えないところで家を傷める「内部結露」に注意
どれだけ立派な構造でも、目に見えない場所で木が腐ってしまっては意味がありません。その原因となるのが「内部結露」です。
内部結露とは、壁の中に湿った空気が入り込むことで、壁の内側で結露(水滴)が発生し、構造材が腐ってしまう現象のこと。木が腐ると、家の耐震性や耐久性が一気に落ちてしまいます。だからこそ「見えないところを守る」内部結露対策がとても大切です。
・気密性能(C値)は0.7以下を
内部結露を防ぐために欠かせないのが、「気密性」です。
気密性が低い(=すき間が多い)と、室内の湿った空気が壁の中に入り込み、見えない場所で結露を起こしてしまいます。
この気密性を数値で示したのが「C値」という指標。
C値は、数値が小さいほど家のすき間が少なく、気密性が高いという意味になります。
結露を防ぐためには、C値0.7以下を目指すのが理想的です。
しかし、気密性能を表すC値は国の建築基準法には含まれていない項目のため、住宅会社ごとに意識の差が大きいのが現実です。家づくりを依頼する前に、「C値はいくつですか?」と確認するようにしましょう。
また注意したいのが、「鉄骨住宅」の気密性です。鉄骨造は構造上どうしてもすき間が生じやすく、C値を低く抑えるのが難しいため、気密性能を確保しにくい傾向があります。
ホールやオフィスといった、人が長時間暮らさない施設であれば問題は少ないかもしれませんが、毎日過ごす戸建て住宅においては、住環境への影響が大きいため、鉄骨住宅はあまりおすすめできません。
快適で長持ちする家を目指すなら、木造住宅でしっかりと気密性を確保する設計が安心です。
・結露しにくい窓選びも大切
もうひとつの重要なポイントが「窓の種類」です。特におすすめなのが、外も内も樹脂でできたオール樹脂サッシです。樹脂はアルミに比べて熱を通しにくいため、結露が発生しにくい素材です。一方で、アルミサッシは冷えやすく、壁との接合部で内部結露が起きやすくなります。最近ではアルミサッシを採用する住宅会社は減ってきましたが、もしアルミを使っていたら要注意です。
内部結露は、家の外からは気づきにくく、気づいたときには木材が腐っていた…ということも少なくありません。長く安心して住むためにも、「気密性能」と「結露しにくい窓」を意識して、見えない部分から家を守ってください。
■家の品質は現場の腕しだい、「施工精度」の重要性
どれだけ良いプランを立て、優れた耐震性能を備えていても、施工(工事)の精度が低ければ、その家は本来の性能を発揮できません。
実際に、熊本地震では施工不良が原因とされる倒壊が複数件報告されています。
つまり、「ちゃんと建てられているか?」が、命を守る家づくりの要となります。
・工事の進捗報告は週1回以上が目安
家づくりをお願いする住宅会社が、工事の進捗を週1回以上しっかり報告してくれるかどうか、これは非常に大切なポイントです。
報告が全くない会社や、写真すら送られてこない会社は、現場管理がゆるく、職人との連携も取れていない可能性があります。
報告の頻度が高いほど、工事ミスの早期発見にもつながります。
「どんな工程が進んでいて、今どんな状態なのか」――きちんと説明して報告をくれる会社を選びましょう。
・「現場見学NG」の会社は要注意!
自分の家が建っていく様子は、誰しも気になるもの。だからこそ、「現場を自由に見に行けるかどうか」も、住宅会社を選ぶうえでとても重要です。
見学に許可が必要だったり、「今日はちょっと…」と断られるような会社は要注意。それはつまり、現場に見せられない何かがある、もしくは職人教育が行き届いていない証拠かもしれません。逆に、「いつでもどうぞ!」と快く受け入れてくれる会社は、現場に自信がある証拠。現場の透明性が高い会社こそ、施工精度にも期待できますね。
家の性能を本当に活かすには、「施工の質」が欠かせません。最後は誰が、どうやってつくるかにかかっています。
しっかり見える現場で、安心して任せられる住宅会社を選びましょう。

■地震に強い家づくりは「土地選び」から
どれだけ強い家を建てても、その土地自体が弱ければ意味がありません。
実際、2024年の能登半島地震では、液状化によって家が傾く被害が多数報告されました。つまり、「安心できる土地かどうか」が、家の耐震性に直結しているのです。
・まずはハザードマップをチェック!
土地選びの第一歩は、ハザードマップの確認です。液状化や土砂災害のリスクが高いエリアは、ハザードマップでしっかり示されています。
特に液状化のリスクはマップでかなり正確に確認できるため、これから土地を探す方は必ずチェックを。「何となく良さそう」ではなく、データを見ながら危険な場所を避けることが大切です。
・便利な場所=地盤が弱いことも
都市部や平地で交通アクセスの良いエリアは人気ですが、実はそうした場所は地盤が弱い傾向にあります。逆に、山手側などの不便なエリアは地盤が強いことが多いです。もちろん全てがそうとは限りませんが、災害リスクと利便性のバランスを見て選ぶ意識が大切です。
・耐震等級より先に土地の安全性を
「耐震等級が高いから安心」と思われがちですが、地盤が弱くて土地自体が傾いてしまえば、その性能は意味をなくします。だからこそ「家の安全性は土地選びから始まる」という意識を持ってください。
地震に強い家は、「安心できる土地」の上に建ててこそ。
ハザードマップや地盤データをしっかり確認して、家族の未来を守れる土地を選びましょう。
■「家」だけに命を守らせない
地震に強い家づくりは、もちろん大切ですが、「家だけ」に命を守らせようとして、他の大切なことを犠牲にしてしまうのは本末転倒です。
例えば、耐震等級が最高でも、車が古くて安全性能が低ければ交通事故のリスクは高まります。有料の健康診断を受ける余裕がなければ、病気に気づけず命を落とすこともあります。
実際の年間の死亡者数を見てみると…
・交通事故:約2,600人
・ヒートショック:17,000人以上
・がん:380,000人以上
・自殺:20,000人以上
…地震による死亡者数よりも多いリスクが、たくさんあります。
「いい家を建てたい」と頑張るあまり、「車はボロボロ」「健康診断も行けない」「保険にも入れない」「毎月ギリギリで家計が苦しい…」そんな状態になってしまっては、命を守るどころか、日々の生活にストレスが溜まり、かえって健康や家族の心に負担がかかってしまいます。
住宅ローンが家計を圧迫すれば、心の余裕も失われていきます。「住まい」は、幸せに暮らすための土台であって、重荷になってはいけません。
だからこそ、「家」「お金」「生活」「健康」…すべてのバランスを整えることが、本当の意味で命を守る家づくりです。地震対策は大切。でも、それだけに偏らず、暮らし全体の安心に目を向けてみてください。
家は、家族を守る「手段のひとつ」。
家づくりに夢中になりすぎず「暮らしそのものの安心」を忘れないでください。
それが、本当に幸せなマイホームづくりにつながると、私は思います。

■ 地震対策でよくあるご質問(Q&A)
Q. 重い屋根って地震に弱いの?
A. 確かに不利にはなりますが、構造を強くすれば問題ありません。
「瓦などの重い屋根は地震に弱いのでは?」という声をよく聞きます。実際、屋根が重くなると建物全体にかかる負担が増えるため、地震時に不利になるのは事実です。
ただし、許容応力度計算では屋根の重さも含めて強度を計算するので、「重い屋根=危ない家」ではありません。重い屋根にするなら、それに見合った柱や壁を強化する必要があるということです。耐震性と軽さを両立する屋根材としては、ガルバリウム鋼板などの軽い金属屋根がおすすめですが、瓦にこだわる場合も、しっかり構造計算して強度を確保すれば問題ありません。
Q. 家の四隅に壁は残した方がいいの?
A. 絶対ではありませんが、できるだけ残すのがおすすめです。
家の四隅に壁(=耐力壁)を残すことで、建物の横方向・縦方向の揺れに対してバランスよく力を分散できます。これは、地震に強い構造をつくるうえで非常に有利になります。
特に、四隅に耐力壁があると「ねじれ」に強くなるため、偏心率(構造のバランス)を抑えることにもつながります。
もちろん、間取りの都合で四隅に壁を設けられないケースもあると思います。その場合は、他の場所で耐力壁を増やすことで調整可能です。全体のバランスを考えたうえで設計することが大切です。
Q. 後から太陽光パネルを載せる場合は注意が必要ですか?
A. 慎重な判断が必要です。
後から太陽光パネルを載せる「後付け」の場合、新築時の構造設計にパネルの重さが反映されていないことが多く、耐震性に悪影響を与える可能性があります。特に注意したいのが、建物の重心バランス(偏心率)です。屋根の一部に重い設備が加わると、地震の揺れ方が偏って建物が“ねじれるように”揺れる危険性があります。これは、耐震等級が高くても倒壊リスクが上がるケースです。
また、屋根の構造自体が太陽光の荷重に対応していない場合、部材のたわみや劣化の原因になりかねません。「あとで考えよう」ではなく、太陽光を設置する可能性が少しでもあるなら、最初から構造設計に組み込んでおくことがベストです。
防災のつもりで載せた太陽光が、逆に地震時のリスクを高める原因にならないよう、慎重に対応しましょう。
Q. 吹き抜けは地震に弱いって本当ですか?
A. 構造上は弱点になりやすいですが、しっかり設計すれば問題ありません。
吹き抜けがあると、2階の床が一部なくなるため、建物の面で支える力が弱くなります。床は地震の揺れを分散・吸収する役割を担っているので、吹き抜けがあると耐震性は基本的に低下すると考えられます。
ただし、だからといって「吹き抜け=危険」ではありません。許容応力度計算に基づいた構造設計を行い、梁の強化や火打ち梁などで補強を適切に行えば、耐震等級3も十分に取得可能です。
開放的な空間は魅力的ですが、「見た目重視」で安全性が犠牲にならないよう、構造的な裏付けがあるプランかどうかをしっかりチェックしてくださいね。
Q. L字型の家は地震に弱いって聞きましたが本当ですか?
A. 形状的にはバランスが悪くなりやすいため、注意が必要です。
建物は、四角形のようなシンプルな形ほど地震の揺れに対して安定します。一方で、L字型のように角が欠けている形は、地震の力が偏って伝わりやすく、建物の一部に負荷が集中してしまう可能性があります(=偏心が大きくなりやすい)。
ただし、こちらも「形が悪い=ダメ」ではありません。許容応力度計算による構造設計、壁や柱のバランスの見直し、必要に応じた補強を行えば、L字型でも十分に地震に強い家にすることは可能です。L字型の間取りにしたい場合は、「デザイン先行で決めずに、必ず構造も合わせて考える」ことが大切です。
Q. 制振装置(ダンパー)って入れたほうがいいですか?
A. 入れれば安心感は増しますが、まずは「耐震」が優先です。
制振装置(ダンパー)は、地震の揺れを吸収してくれる装置で、入れることで揺れが抑えられる効果があります。ただし、設置にはそれなりの費用がかかります。
まずは家そのものの「耐震性」がしっかりしていることが大前提。そのうえで「もっと安心したい」「繰り返し地震への備えもしておきたい」という方には、制振装置をプラスするのがおすすめです。
中でも油圧式のダンパーは、震度が小さい揺れでもしっかりと効いてくれるため、より効果的でおすすめです。