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シシトウ
こんにちは、工務課の森です。
大学時代の夏休み。
昼の時間をもて余してはと、バイトをひとつ増やした。
しゃぶしゃぶの店。
誘ってきたのは、大ちゃん。
この大ちゃん、イメージ通りの風貌で、割烹着が異様に似合った。
その見た目は、既にプロの料理人だ。
即、調理補助に採用。
私はというと、店長からホール係りをすすめられたが、接客スキルなどゼロ、言葉づかいも怪しい‥、
洗い場を申し出た。
先輩は、母親と同じくらいのおばさん2人。
この店、セットメニューが多くて、小皿の数がエグい。
昼のピークには、皿が積み上がる。
テトリスのゲームオーバー寸前の様な状態が続く。
おばさんたちと3人、フルスロットルでガシャガシャと皿を処理していく。
そんなある日、夜の部のベテランと言われる洗い場担当が応援に来た。
私より年下、髪は長めでチャラい。
正直「大丈夫か?‥」と思ったが、流しの前に立つと顔つきが変わった‥、
皿さばきが異常。
おばさん2人分を超える衝撃的な馬力がある。
だが、本当の衝撃はそこじゃない。
ある日、子ども用セットの残り物、ハンバーグが半分、皿に残っていた。
彼、それを見た瞬間——
「やったー!」と叫んだ。
ビショビショの手で鷲掴みし、そのまま口に放り込んだ‥
手を流しに戻し、口をもぐもぐさせる。
更に、瓶に少し残ったオレンジジュースをラッパ飲みで流し込んだ。
洗い場の神‥を見た瞬間だった、
当然、私は当然ドン引き‥、
こんなヤツが存在するのか‥、
すると神が言う。
「森ちゃんも、遠慮しないでいっちゃってよ」
しかし、そんな一言に、少しずつ洗脳されていった‥
気色悪くて絶対にあり得ないと思っていた私も、神の道を少しずつ歩み始めることになっていく‥、
昼のシフトが終わると、まかないの時間。
ご飯は食べ放題。
大ちゃんと、10人くらいのおばさんに囲まれ食事をする。
みんな仕事とは別の顔、おばさんが集まると、とにかくやかましかった‥。
おばさんたちがよそってくれるご飯は大盛り、ビジュアルは漫画だ。
茶碗が空になりかけると、
「あんたたち若いんだで、もっと食べや〜」と茶碗を取り上げ、リスタート。
「もうごちそうさまです」と言うと、
「遠慮しとっていかん〜」とまたもとどおり‥
だが問題はそこじゃない‥
おかずは毎日シシトウの天ぷらだけ‥、
毎日、毎日、シシトウ‥、しかない‥
シシトウだけで何度も再生する白米を食べるのはしんどい‥、
大ちゃんと目を合わせ、
ヤケクソ口を動かした‥‥
あれから数十年。
今では、ときどき無性に——
あのシシトウが食べたくなる。
洗い場で学んだ、たくましさ‥
皿の山と、神と、おばさんの優しさと‥、
今でもシシトウは、あの夏休みの味がする。
え