アイコン太陽ハウジングのづくりコラム
アイコンテキスト

  • TOP>
  • 家づくりコラム

2025.06.12

【親の家を相続したらどうする?】放置は危険!空き家の3つの選択肢と注意点とは?

こんにちは、太陽ハウジングです。

「親の家を相続することになったけれど、正直どうすればいいかわからない……」

これは、先日開催したオーナーさま感謝祭で実際に寄せられたご相談のひとつです。

相続は人生でそう何度も経験することではありません。特に空き家となった実家をどう扱えばいいのかは、多くの方にとって悩ましい問題です。

「解体するのか、売るのか、どう管理すべきか」
「兄弟と話がまとまらない」
「親が認知症で何も決められない」
といった、さまざまな壁に直面します。

空き家の相続は、心の問題だけでなく、法律・お金・人間関係が複雑に絡みます。

今回のコラムでは、相続した空き家にまつわるリスクや対策、そして後悔しないための「3つの整理」について、わかりやすく解説します。

空き家を放置すると、思わぬトラブルに

空き家をそのままにしておくと、思ってもみなかったトラブルにつながることがあります。「そのままで問題ないだろう」と放置していると、思わぬ損害や近隣トラブル、法的な責任を招く可能性も。

ここでは、空き家を放置することで起こる主なリスクを3つに分けてご紹介します。

  • 建物の劣化が急速に進行する
  • 防犯・防災リスクが増す
  • 維持費がかかり続ける

それぞれについて、具体的に見ていきましょう。

建物の劣化が急速に進行

空き家になった建物は、人が暮らしていた頃と比べて驚くほど早く劣化が進行します。これは、換気や通水が行われなくなり、湿気や温度変化が建物内部にこもるためです。

・湿気による木材の腐食やカビの発生

風が通らなくなることで、室内の湿度が異常に高くなり、床や壁、柱などの木材が傷んでしまいます。畳や押入れの中、クローゼットなど、風通しの悪い場所ではカビが広がりやすく、家全体に臭気が残ることも。

排水トラップ内の水が蒸発し、下水臭が充満

キッチンや浴室、トイレの排水管には、下水からの臭いを遮るための“封水”がありますが、水が使われなくなると自然に蒸発し、下水の臭いが家中に立ち込めてしまいます。

・害虫や小動物の侵入・繁殖

無人の家は、人の気配がないことからネズミやハクビシン、野良猫などの小動物が住みつきやすくなります。天井裏や床下に巣を作られると、糞尿の臭いやノミ・ダニの繁殖によって衛生環境が著しく悪化します。

また、ゴキブリやシロアリ、ハチなどの害虫被害も放置された空き家では頻発します。特にシロアリは目に見えないところで柱や土台を食い荒らすため、気づいたときには建物の耐久性が著しく低下している場合があります。

こうした劣化や被害は、「たった数ヶ月の放置」でも驚くほど進むことがあります。
「見た目は大丈夫そう」と思っていても、目の届かない内部でダメージが進行しているのが空き家の怖いところです。

防犯・防災リスクが増す

誰も出入りしていない空き家は、「無人」であることが周囲からも一目でわかるため、不審者に狙われやすくなります。郵便受けにチラシが溜まっていたり、カーテンが常に閉めっぱなしになっていたり、庭の草が伸び放題だったりすることで、「ここは空き家だ」とすぐに判断されてしまうのです。

・勝手に住みつかれるケースも

長期間放置された空き家には、不法侵入者が勝手に入り込み、住みついてしまうことがあります。実際に、長年空き家だった住宅に身元不明の人物が暮らしていたという実例も各地で報告されています。中には、電気や水道を無断で使用していたケースもあり、知らない間に公共料金が発生していたというトラブルに発展したこともあります。

・放火・火遊びなどによる火災の発生

空き家は放火の標的になりやすいというのも大きな問題です。
誰にも見られずに侵入できることから、子どもたちの火遊びや悪意のある放火の現場になりやすく、火が出てから発見されるまでに時間がかかるため、被害が大きくなりやすいのです。周囲の住宅にまで延焼すれば、空き家の所有者は重大な損害賠償責任を負う可能性もあります。

・老朽化による落下事故と所有者責任

放置された空き家は、屋根や外壁、ブロック塀が劣化し、崩壊の危険性が高まります。特に風雨や地震のあとには、部材の一部が落下して通行人に怪我をさせてしまうケースもあります。

このような事故が起きた場合、「適切な管理をしていなかった」として、所有者が法的責任を問われる可能性があります。たとえ使っていない家であっても、所有している以上は管理責任が生じます。

・犯罪の温床になるリスク

空き家は単に“危険な場所”として見られるだけでなく、犯罪の温床になるケースもあります。たとえば、薬物の栽培や不正取引の現場、盗品の保管場所などに使われることもあります。

また、空き家を第三者が勝手に売却しようとする「地面師詐欺」もあります。(「地面師たち」という映画もありましたね。)

いずれにしても空き家は、放っておけばおくほど、所有者の知らないところで使われてしまうリスクが高まります。

空き家を「ただ放っておく」ことは、近隣住民にとっての大きな不安材料となり、治安や防災の観点からも社会的な問題を引き起こします。

維持費がかかり続ける

空き家といっても、「誰も住んでいないからお金がかからない」とは限りません。
所有している限り、さまざまな維持コストが継続的に発生します。
それらは少額に見えても、積み重なれば年間で数十万以上になることも珍しくありません。

例えば…

・固定資産税や都市計画税の支払い

住宅が建っている土地には、毎年固定資産税や都市計画税が課せられます。
特に注意が必要なのは、建物を解体して更地にした場合、税の優遇措置がなくなるという点です。

通常、住宅が建っている土地(住宅用地)は、固定資産税が最大で1/6に軽減される特例があります。しかし、解体して建物がなくなると、この軽減措置が外れ、翌年以降の固定資産税が跳ね上がることになります。

・電気・ガス・水道の基本料金(たまに使うため止めにくい)

「たまに確認に行くため」「いざというとき使いたいから」と、電気・ガス・水道を契約したままにしている方も多く見られます。
これらのライフラインには、使用量に関係なく毎月発生する基本料金があります。

実際に使用していないにもかかわらず、月々数千円の支払いが年単位で積み重なり、数万円〜数十万円の負担になることもあります。

・庭や建物の管理費(清掃・草刈り・剪定など)

庭の雑草が伸び放題になれば、近隣から苦情が出る原因になりますし、外観が荒れていれば不法投棄のターゲットにもなりやすくなります。

そのため、庭木の剪定や草刈り、落ち葉の清掃などの定期的な手入れが必要になります。これを自分たちで行うのが難しい場合、業者に依頼する必要がありますが、その際は1回あたり数千円〜数万円の費用がかかります。

室内についても、放置することでホコリや湿気が溜まりやすくなり、清掃の手間やカビ対策の必要性が出てきます。

また、屋根や外壁の破損、雨漏り、配管の破裂など、「突然の修繕費」も空き家にはつきものです。人が住んでいないからといって劣化が止まるわけではなく、逆に気づくのが遅れるため、被害が大きくなりやすいのです。

特に木造住宅の場合は、数年放置するだけでも柱や床が腐ってしまい、修繕に数十万円以上の費用がかかることもあります。

空き家は「使わない=費用ゼロ」ではなく、「使わなくても出費が続く資産」です。
この事実を知らずに相続や管理を引き受けてしまうと、気づいた頃には「何もしていないのにお金だけが出ていく状態」になってしまいます。

だからこそ、「この家を維持するのか」「手放すのか」を早めに判断し、継続的に支払い続ける維持コストとどう向き合うかを計画的に考える必要があります。

なぜ相続がうまく進まないの?その理由と背景

空き家の大きな問題点のひとつが、「相続がうまく進まず、家の扱いが決められないまま放置されてしまう」ことです。この背景には、法律上の手続きの難しさや、家族間の意見の食い違いが存在しています。

・遺産分割協議の壁

親が亡くなったあとに、子どもや配偶者など複数の相続人がいる場合、遺産をどのように分けるかを話し合って決める必要があります。これを「遺産分割協議」と言います。

土地や建物のような不動産は、現金のように、きれいに分けることが難しいため、相続トラブルになりやすい財産のひとつです。

「兄は実家を使いたいと言っているが、弟は売却して現金で分けたい」
「相続財産が実家だけなので、実家をもらった人が得と他の相続人に思われやすい」
「誰も住むつもりはないが、先祖の家だから売りたくない」

…といった意見の食い違いから、協議がまとまらず、不動産の名義変更や売却ができないまま数年が経過することもあります。

遺産分割協議がまとまらなければ、空き家は誰のものでもない状態のまま宙ぶらりんになり、管理も処分もできなくなります。そして誰も手をつけないまま、老朽化が進み、地域にも悪影響を及ぼす空き家になっていきます。

・親が認知症になると手続きが止まる

もう一つ見落とされがちなのが、「親がまだ存命で、認知症を発症してしまった場合」の問題です。

土地や建物の所有者が認知症になると、法的な契約行為(売却・賃貸・贈与・解体など)が一切できなくなります。なぜなら、日本の法律では、契約は「本人の意思に基づいて行われること」が前提だからです。

つまり、空き家にしておきたくない気持ちがあっても、売りたくても売れない、貸したくても貸せない、解体したくても業者と契約ができないという、すべてが止まった状態になってしまうのです。


よくあるご質問(Q&A)

Q. 成年後見人という制度を使えば、すぐに売却手続きができるって本当ですか?
A. たしかに成年後見制度を使えば売却も可能ですが、「すぐに自由に売れる」というわけではありません。

売却には家庭裁判所の許可が必要で、申立てから審査・許可までに時間も手間もかかります。

成年後見制度は、認知症などで判断力が低下した方に代わって、財産を管理・契約するための制度です。ただし、家や土地の売却のような重要な契約には、家庭裁判所の事前の許可が必要で、すぐに手続きを進めることはできません。

また、後見人が家族とは限らず、司法書士や弁護士などの専門職が選ばれるケースも多く、その場合は毎月の報酬(数万円〜十数万円)や、裁判所への定期報告義務が発生します。本人の生活費の管理、通帳のコピー提出、領収書の保存など、思っている以上に負担が大きくなることがあります。

Q. 「家族信託」は高額な費用が発生せず、誰でも気軽に使える制度ですよね?
A. 自由度は高い制度ですが、契約の設計や登記に専門家のサポートが必要で、一定の費用はかかります。

家族信託は、親が元気なうちに「もしものとき」に備えて財産の管理や処分方法を託しておく制度です。たしかに自由度が高く柔軟に対応できる仕組みですが、法的な契約や登記が必要なため、一般的には司法書士や弁護士などの専門家に依頼します。費用の目安はケースによりますが、信託内容によって数十万円かかることもあります。

ワンポイント

成年後見制度は「認知症発症後の対策」、家族信託は「元気なうちの備え」です。
それぞれの制度にはメリット・注意点があるため、「親がまだ元気なうち」に家族で話し合っておくことが大切です。

空き家相続に備える「3つの整理」

空き家の相続に向き合うには、「感情」だけでなく「情報」や「家族の意見」も含めて整理しておくことが大切です。

次の3つの視点で備えることをおすすめします。

お金の整理(現実的なコストの把握)

空き家を持ち続けるにも、手放すにも、お金のことは避けて通れません。まずは、以下のような数字を把握しておきましょう。

  • ・解体費用はいくらかかるか?
  •  ⇒ 木造住宅で30坪なら約150~200万円。RC造ならもっと高額に。

・売却した場合、どれくらいの価格がつくか?
 ⇒ 不動産会社による現地査定が必要です。

・今のまま維持するなら、年間どれくらい出費があるのか?
 ⇒ 固定資産税・草刈り・水道基本料などで10~20万円前後かかることも。

「とりあえず保留」ではなく、将来の選択肢を広げるために、まずは現状を見える化すことが第一歩です。

  • 行く末の整理(家の未来を話し合う)

その家を「将来どうするか」について、家族間で方針を共有しておくことが重要です。

・将来誰かが住む予定があるのか?
・それとも、貸す?売る?解体?
・相続人はその方針に納得しているか?

よくあるのが「娘が将来戻って住みたいと言っていたが、いざ時が来るとその予定がなくなった」というケースです。家の未来を決めるのは「気持ち」だけでなく「環境の変化」も大きく影響します。だからこそ、いまのうちに選択肢ごとのメリット・デメリットを整理しておくことが大切です。

  • 気持ちの整理(想いとの向き合い方)

実家には思い出が詰まっているため、「手放すこと」に抵抗を感じる方も多いです。

・親の仏壇や形見がある
・家財が残っていて整理する気持ちになれない
・いざとなると「もったいない」と感じてしまう

こうした感情が整理されていないと、気づかないうちに何年も放置してしまうことも…。
写真に残す、形見だけ先に整理するなど、自分にとって納得のいく心の区切りのつけ方を探っていくことも、空き家問題の大事な一歩です。

空き家をどうするか

空き家の扱い方に正解はありません。家族の状況、将来のライフプラン、地域の不動産需要などによって、「ベストな選択」は異なります。

大きくは次の3つの方向性がありますが、大切なのは、「その家にとってベストな出口」を見つけることです。

管理する(維持保全)

「今すぐ手放すわけではないが、家は大切に残しておきたい」という場合、管理をしながら維持するという選択肢があります。

通風・通水

月に一度程度、窓を開けて空気を入れ替え、水道を流して配管内の腐敗臭や劣化を防ぐ。

庭や外構の手入れ

雑草除去・庭木の剪定・落ち葉掃除などを定期的に行う。

室内の簡易清掃

カビの発生や動物の侵入を防ぐ目的。

費用面では、管理代行業者に依頼すると月額5,000円〜15,000円程度が相場。
コストと手間はかかりますが、「急いで決められない」「思い出が強い」場合には現実的な方法かもしれません。

【注意点】
管理を怠ると、建物の劣化や近隣からの苦情につながるリスクがあります。一時的な選択肢として考え、将来的にどうするかを考える必要があることを忘れずに。

  • 活用する(住む・貸す)

「せっかくある家を使いたい」という場合、住むか貸すかの選択肢があります。

・子世帯・孫世帯が住む
・リフォームや設備点検を行い、貸し出す

ただし、賃貸に出す場合は以下のようなことが必要になります。

・建物状態の確認(耐震性・雨漏り・カビ・シロアリ)
・修繕や原状回復の費用
・仲介業者との契約・入居者募集・管理体制の整備

「貸せば収入になる」と安易に考えるのは危険で、準備には時間とお金がかかる点に注意が必要です。

【注意点】
見た目が綺麗でも、築年数やインフラの老朽化により想定以上の修繕費がかかることもあります。また、空室リスク家賃滞納リスクなど、管理面の負担も考慮しましょう。

手放す(売却・解体・譲渡)

空き家を今後使う予定がなく、管理や維持が難しい場合は、手放すという選択肢もあります。代表的なのは「売却」「解体して更地にする」「誰かに譲渡する」といった方法です。

・売却

不動産会社に査定を依頼し、物件の状態や立地に応じた販売価格を確認することから始めます。古い建物がある場合は、「建物付き」で売るか「更地にしてから売るか」で、購入希望者の層や売れるスピードも変わってきます。

また、売却にあたっては残置物(家具・家電など)の片付けや、必要に応じて境界の確認、測量などの手続きが発生することもあります。

・解体

老朽化が著しく、建物としての利用が難しい場合には、「解体して更地にする」という選択肢もあります。木造住宅30坪程度の家であれば、解体費用の目安は150~200万円程度が一般的です。

ただし、ここで見落としてはいけないのが「アスベスト(石綿)」の問題です。昭和50年代(1970年代後半)から平成初期までの建物には、断熱材や外壁材、屋根材などにアスベストが使用されているケースがあります。アスベストは吸引による健康被害(肺がんや中皮腫など)が知られており、解体時には専門の資格を持つ業者による適切な処理と飛散防止措置が義務づけられています。

そのため、アスベスト含有が確認された場合には、通常の2〜3倍の解体費用がかかることもあり、見積もりの段階でしっかり確認しておくことが必要です。ご自身で判断するのは難しいため、該当する築年の建物の場合は、必ず専門の解体業者や建築士に事前調査を依頼するようにしましょう。

また、建物を解体すると固定資産税にも影響があります。住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が最大1/6程度に軽減されますが、更地になるとこの特例が解除されて税額が大幅に増加します。特に都市部では、解体後の固定資産税の負担が急激に増えることもあるため、事前にシミュレーションしておくと安心です。

・譲渡

家族や親族、知人などに譲渡する方法もあります。ただし、たとえ無償であっても、贈与税や不動産取得税の課税対象となる可能性がありますし、登記の変更や契約書の作成といった法的手続きも必要です。

また、空き家が建っている土地自体を相続したくないという場合には、「相続土地国庫帰属制度」を利用して、国に土地を引き取ってもらうという選択肢もあります。

ただし、この制度には、①建物が残っていないこと(更地であること)、②隣地との境界に争いがないこと、③土壌汚染や埋設物がないことなど、厳しい条件が定められており、誰でも気軽に利用できる制度ではありません。

このように「手放す」という決断には、それぞれに必要な費用・手続き・税の負担が伴います。最終的にどの手段を選ぶにしても、早めに専門家に相談しながら、準備を進めていくことが大切です。

空き家の対応に「絶対に正しい正解」があるわけではありません。

「どうしたらいいか分からない」——その気持ちは、とても自然なものです。

空き家には思い出もあり、手間もお金もかかるからこそ、すぐに決断するのは難しいもの。でも、何も決めないままでいると、もっと大変なことになってしまうかもしれません。だからこそ、今のうちに、少しずつ考えてみてください。

このコラムが、その第一歩になれたら嬉しいです。