COLUMN

家づくりコラム

散らかる家には理由があった。 住宅のプロが教える「建てる前に仕込む」片づく家の5つの黄金ルール

こんにちは、太陽ハウジングです。

私たちは家を建てる前のご相談で、こんなお悩みをよく伺います。

「収納はあるのに片づかない」
「なぜかリビングが散らかる」
「毎日片づけても気づくとまた散らかっている…」

でもこれ、暮らし方や性格の問題ではありません。

多くの場合、家づくりの段階で散らかりやすい構造が無意識のうちに組み込まれてしまっているだけなのです。

だからこそ今回のコラムでは、家づくりを考え始めた今のタイミングだからこそ知っておいてほしい「片づく家をつくるための黄金ルール」を、設計の視点からお伝えします。

片づく家の前提|散らかりは「性格」ではなく「構造」

まず大前提として知っておいてほしいこととして、片づけには、2つの段階があります。

・いらないモノを分ける【整理】
・使ったモノを元に戻す【整頓】

散らかりやすい家の多くは、整理ができていないのではなく、整頓が続かない構造になっています。
つまり、「片づく家=頑張る家」ではありません。

整頓が、無意識で終わる家。

この視点を持ったまま、これから紹介する5つの「片づく家の黄金ルール」を見てみてください。

ルール1|すべてのモノに「住所」を決める

片づく家づくりの原点は、家の中のモノに「住所」を与えることです。

住所がないと、片づけは毎回「どこに置こう?」から始まり、考えるほど面倒になります。
住所が決まっているだけで、片づけは「戻すだけ」の単純な行為に変わります。

ここで大切なのは、収納を増やすことではありません。
「どこに何をしまうか」を、使い方とセットで決めることです。

たとえば、薬の住所が遠い家は、結局テーブルに出しっぱなしになります。

郵便物の住所が決まっていない家は、書類の山が育っていきます。
反対に、使う場所のすぐそばに住所があると、人は驚くほど素直に戻せます。

散らかりやすい家ほど「収納はあるのに片づかない」と言います。
これは、収納の量ではなく、住所の位置がズレているサインです。

住所は“部屋”ではなく“動作の終点”に置く。これが第一のルールです。

【間取りを考える前に、ここをチェック!】

・今の暮らしで「よく出しっぱなしになるモノ」を3つ思い浮かべてみてください。
・「使う場所のすぐそばに戻す場所があるか?」を間取りで確認してみましょう。
・図面上で何となく空いている収納があったら、「ここには何が入る?」と具体化してみてください。

⇒住所が決まらないモノは、必ず仮置きされます。

ルール2|玄関を「散らかりの防衛ライン」にする

家の中にモノが増える入口は、ほぼ玄関です。

だから玄関は、靴を脱ぐ場所というより「家の中に散らかりを侵入させない場所」として考えると、家全体が整いやすくなります。

たとえば郵便物。
家の奥へ持ち込むほど、途中で置きっぱなしになります。
玄関付近に“開ける場所”があるだけで、不要なチラシをその場で処理できて、紙の山が育ちません。

宅配便も同じです。
段ボールをリビングに入れないだけで、散らかりの速度が目に見えて落ちます。

開封する道具を玄関に置き、開けてたたむところまで玄関で完結できると、家の中に“段ボール置き場”が生まれません。

外出・帰宅のたびに使うモノも、玄関が基本です。
帽子、鍵、ジムバッグ、雨具、子どもの外遊びグッズ。
これらは奥へ運ぶ理由が薄いので、玄関に“戻す場所”があるほうが自然です。

片づけは「意志」より「流れ」。
玄関を整えると、家の中の散らかりは驚くほど減っていきます。

【間取りを考える前に、ここをチェック!】

・帰宅した瞬間の行動を、玄関から順番に思い出してみてください。鍵、郵便物、バッグ、上着などをどうしますか?
・それらを「家の奥に持ち込まなくても完結できるか」を図面でチェックしましょう。

⇒玄関で止められない散らかりは、必ずLDKまでやってきます。

ルール3|衣類は遠いクローゼットが散らかりの元になる

散らかりの主犯になりやすいのが衣類です。

仕事から帰って、上着をソファにポン!
バッグを椅子にポン!

これはだらしないからではありません。
多くの場合、片づけ先が遠いだけです。

ここで効果的なのが、玄関近くに設ける「デイリークローゼット」。
寝室のクローゼットとは別に、日常で使う上着やバッグを受け止める収納です。
帰宅してすぐ掛けられる位置にあるだけで、衣類は床に落ちにくくなります。

人は疲れているほど「近い場所」にしか戻せません。
だから、帰宅後の最短距離に戻せる場所をつくる。
これが衣類散らかり対策の本質です。

さらに、洗面や脱衣に近い位置にこの収納があると、着替えの流れが整います。
部屋着をここに置いておけば、帰宅⇒着替え⇒手洗い・入浴の導線が途切れません。
洗濯物をしまう動作も短くなり、結果的に「名もなき家事」のストレスが減っていきます。

【間取りを考える前に、ここをチェック!】

・帰宅後、「疲れている日の自分」を基準に、上着やバッグをどこに置きたいかを考えてみてください。
・居室以外に、日常使いの衣類を受け止める収納があるか確認してみましょう。

⇒遠くにある収納は、存在していないのと同じです。

ルール4|洗面・脱衣は「収納不足」が家全体に波及する

洗面・脱衣所は、見落とされやすい散らかりポイントです。

タオル、下着、洗剤、ストック、掃除道具、ドライヤー、スキンケア用品。
置くものが多いのに、スペースは限られがち。

ここで収納が足りないと、モノは“避難”してリビングに流れ込み、家全体が散らかり始めます。
この場所は、分散させるよりも「まとめてしまえる」ほうが強いです。

タオルが別の棚、下着が別の部屋、洗剤が廊下収納…となると、家事の動きが伸び、途中で“仮置き”が発生します。

反対に、洗面・脱衣まわりで使うものが一箇所に集まっていれば、動きが短くなり、戻すハードルも下がります。

収納は量だけでなく“深さ”も重要です。

洗面まわりは洗剤ボトルなど意外と大きいものが多いので、浅すぎると収まりません。
一方で深すぎると奥が見えなくなり、管理が難しくなります。
(ここは後半の寸法パートで、目安も含めて触れます。)

【間取りを考える前に、ここをチェック!】

・洗面・脱衣で使うモノを、紙にすべて書き出してみます。
(タオル/下着/洗剤/ストック/掃除道具など)
・それらが「1〜2か所に収まる想定」になっているかを確認。
・「これはどこに入る?」を一つずつ確認しましょう。

⇒ここが溢れると、散らかりは必ずリビングへ流れます。

ルール5|「頑張らない仕組み」が片づく家をつくる

ここまでのルールを支えるのは、たったひとつの考え方です。
人は、ラクなら続けます。
面倒なら続きません。

片づく家は、努力を求める家ではなく、片づけたほうがラクな家です。

よく使うモノが取り出しやすい高さにある家は、出しっぱなしになりにくい。
収納がパンパンで押し込まないと入らない家は、戻すこと自体が面倒になります。

例えば、子どもの学用品を「自室に持っていく」前提の家は、リビング学習が一般化した今、現実とズレて散らかりやすい。

だから“現実の暮らし”に合わせて、戻す場所を近くにつくる。
そのほうが家族のストレスも減ります。

片づけは、家族の我慢大会ではありません。住まいの仕組みの問題です。

【間取りを考える前に、ここをチェック!】

・「これは頑張らないと片づかないかも」と感じる場所に印をつけてみてください。
・家族の暮らし方(リビング学習・帰宅動線・洗濯動線)を思い浮かべながら、それは努力で解決する問題か、設計で解決できる問題かを分けて考えてみましょう。

⇒片づけは、家族の我慢大会ではありません。

ここで挙げたことは、住んでから工夫するより間取りを決める前に考えておくほうが、ずっとラクになります。

■片づかない家にありがちな「3つの典型パターン」

片づかない家には、共通する失敗パターンがあります。
もし一つでも当てはまったら、それは性格の問題ではなく、間取りと収納計画の問題かもしれません。

パターン①使う場所と戻す場所が遠い家

片づかない家で最も多いのが、モノを使う場所と、しまう場所が離れているケースです。

例えば・・・
・帰宅して脱いだ上着を2階のクローゼットに持っていく。
・郵便物を確認してから、リビング奥の収納まで運ぶ。
・洗濯して乾いた服を、別の階や遠い部屋にしまう。

理屈では正しくても、現実には続きません。
人は疲れているときほど「あとでやろう」「ちょっと置いておこう」を選びます。

この「ちょっと」が積み重なることで、一時置きが常態化し、散らかりにつながります。
家が片づくかどうかは「収納があるか」よりも、使う⇒戻すが何歩で完結するかで決まります。

理想は3歩以内。
それを超えると、片づけは作業になり、続かなくなります。

パターン②一時置きスペースがない家

散らかった家をよく見ると、必ずあるのが「とりあえず置き場」です。ダイニングテーブルの端、リビングカウンター、床の一角などに荷物が置かれているケースが多いのではないでしょうか。

多くの方は「一時置き=悪いこと」だと思っていますが、一時置きは暮らしの中で必ず発生します。

郵便物、学校からのお知らせ、買い物袋、バッグ、中途半端な書類など、日々の暮らしの中には「今すぐしまえないモノ」が生まれます。

問題なのは、一時置きがあることではありません。
一時置きの住所(スペース)が決められていないことです。

仮置き場が用意されていない家では、テーブルや床がその役割を引き受けます。

しかもそこは本来、一時置きのための場所ではありません。
次の行動につながらず、モノが居座る原因になります。

一方、片づく家では「ここは一時置きしていい場所」という暗黙のルールがあります。
ニッチ、カウンター、ボックス、棚の一角など、「処理途中のモノが集まる場所」が最初から想定されています。

一時置きを否定するのではなく、一時置きをコントロールする。
これができると、散らかりは広がりません。

パターン③収納が深すぎて「管理できない」家

「収納はたくさん作ったはずなのに、なぜか片づかない」
そんな家に多いのが、収納が深すぎるケースです。

昔ながらの押し入れのように、奥行きが90cm近くある収納は確かに物が多く入ります。
奥に何があるか分からない⇒手前をどかさないと取れない。⇒結果、出しっぱなしに。

これは収納量の問題ではなく、管理できるかどうかの問題です。


人は「一目で把握できない場所」を管理できません。
奥が見えない収納は、次第にブラックボックス化し、「とりあえず突っ込む場所」になります。

特に注意したいのが、用途が決まっていない大きな収納や納戸。
ここはルールがないと、最も散らかりやすい場所になります。

片づく家では、収納は「何を入れるか」「どう出し入れするか」が前提になっています。

深さよりも、
「見える・届く・戻せる」
この3つが揃って、はじめて収納は機能します。

ここまで見てきた3つの構造に共通するのは、どれも住む人の性格とは関係がない、という点です。

・歩かされるから、置く
・仮置き場がないから、溜まる
・管理できないから、出しっぱなしになる

これらはすべて、家のつくりが生んでいる現象です。
だからこそ、家づくりの段階でここを外せば、「頑張らなくても片づく家」に近づきます。

このあと紹介する収納寸法や動線の考え方は、この3つの構造を避けるための具体策。
単なるノウハウではなく、暮らしを整えるための設計の話です。

収納寸法の目安

収納は感覚で決めると失敗します。
ここでは、実際の暮らしの中で「戻しやすい」「使いやすい」現実的な寸法の目安をご紹介します。

収納内容ごとの奥行や高さの細かい数字は、全部覚える必要はありません。

大切なのは、「何をしまうか」と「どこで使うか」に寸法を合わせることです。
軽く目を通して、あとから見返せるようにブックマークしておくのがおすすめです。

クローゼット

⇒奥行き 60cm

クローゼットの奥行きは、よほど大柄な方の衣類でない限り、60cm強あれば十分です。むしろ深くしすぎると、奥にモノが溜まり“忘れられる収納”になりやすくなります。

クローゼットは奥行きを増やすより、幅を確保して、戻しやすい配置にするほうが実用的です。

食器収納

⇒奥行き 約30cm

食器をしまう場所は、奥行き30cmくらいが一番使いやすいと感じる方が多いです。
すべてが見えて、取り出しも早い。

食器棚の奥行きが45cmあると深すぎて、後ろの物が見えなくなり、管理が難しくなります。「収納量が多い」ことと「使いやすい」ことは別だと分かりやすい代表例です。

サニタリー収納

⇒奥行き 約45cm

サニタリーの収納は奥行き45cmあると安心です。洗剤は意外と大きいものが多く、30cmでは厳しいことがあるためです。

ただし、これは使っている洗剤やストック量の好みに左右されます。ここは「何を使うか」を前提に寸法を決めると失敗しません。

収納内容別|奥行きの目安一覧

収納は広ければ良いわけではありません。
大切なのは「何をしまうか」に対して、奥行きが合っているかどうかです。

収納内容奥行の目安理由
書類・本・小物約30cm手前で完結し、奥が死蔵しにくい
食器・カップ類約30cmすべてが見渡せ、出し入れが早い
文房具・日用品小物約25〜30cm浅いほうが散らかりにくく管理しやすい
衣類(畳み)約40〜45cm衣類ケースが無理なく収まる
衣類(ハンガー掛け)約60cm強一般的な衣類なら十分な奥行き
上着・コート類約60〜65cm厚みのある衣類でも干渉しにくい
洗剤・日用品ストック約45cm大きめボトルや詰め替えに対応
サニタリー用品約40〜45cm洗剤・タオル・消耗品の混在に対応
掃除道具(縦置き)約40〜45cm掃除機・ワイパーが倒れにくい
玄関小物(鍵・帽子等)約25〜30cm一時置き化を防ぎやすい
食品ストック
(パントリー)
約35〜45cm奥まで見渡せ、在庫管理しやすい
防災用品約40〜50cm箱・リュック単位で管理しやすい
趣味用品(アウトドア・釣り・DIY等)内容により調整奥行より「用途固定」が重要
子どもの学用品約30〜40cm教科書・ファイルが立てて収まる
ランドセル収納約35〜40cm横置き・立て置きどちらも対応可
季節家電(扇風機等)約40〜50cm出し入れ頻度を考慮

ハンガーパイプの高さ目安

ハンガーパイプは「とりあえず1本」はNG。
誰が・何を・どの頻度で使うかに合わせて高さを分けると、同じ収納量でも使いやすさが大きく変わります。

衣類・用途高さ目安補足・使いどころ
シャツ・ブラウス約100〜110cmシワになりにくく、最も使用頻度が高い
ジャケット約120cm肩がつぶれにくい
コート約140〜160cmロングコートは160cm寄り
ワンピース約130〜150cm丈に合わせて可変にすると便利
スーツ一式(上下)約140〜150cm上下セット管理がしやすい
子ども服約90〜100cm子どもが自分で掛けられる高さ
制服・通学服約100〜120cm毎日使うため取り出しやすさ重視
部屋着・ルームウェア約90〜100cmデイリークローゼット向き
上下2段掛け上:180cm/下:90cm下段は子ども服・部屋着に最適
バッグ・リュック掛け約110〜130cm床置きを防ぎやすい
帽子・小物(フック)約150〜170cm視界に入りやすく忘れにくい

片づく家は、センスや根性でできているわけではありません。

モノに住所があり、玄関で散らかりを止められ、衣類を受け止める場所が近くにあり、洗面・脱衣に必要な収納が揃っていて、頑張らなくても戻せる仕組みになっている。

これだけで、家は驚くほど整います。

もし今の暮らしで「ここ、いつも散らかるな…」という場所があるなら、そこは努力の問題ではなく設計で解ける問題かもしれません。

家づくりを考え始めた方は、間取りの前に「散らかりポイント」から逆算してみてください。

もし「うちはどうだろう?」と感じたら、今の暮らしをそのまま教えてもらえれば、整理のヒントは必ず見つかります。

家づくりは、完成してから気づくことがたくさんあります。でも、収納や動線の後悔は、実は建てる前に防げることがほとんどです。

片づく家は、 完成してから工夫するものではなく、間取りを決める前に仕込むもの。

太陽ハウジングでは、 今の暮らし・動き・散らかりポイントをそのまま伺い、そこから収納と動線を逆算します。

「まだ何も決まっていない」
「間取りを見る前の段階」

そんな今だからこそ、できることがあります。今の暮らしをもとに、片づく家の考え方を一緒に整理してみませんか。

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